
『とりぞせ』は姉崎の伝統郷土料理である。
『とりぞせ』は鳥雑炊の方言で、『とっどせ』『とりどせ』と呼ぶ人もいる。
昔は、農家では鶏をどこで飼っていた。お祭やちょっとした寄り合いの日には、この鶏を1羽絞めてとりぞせを作りもてなすという風習があった。
鶏は肉を食べ骨はダシにするというのが普通であるが、とりぞせは鶏一羽を骨の髄まで使ってしまう。骨まで肉団子にして食べてしまう。
肉と分けた骨を頑丈な叩き台(樹を輪切りにしたもの:写真)の上におき、小振りのなたでこれを砕き、さらに細かくなるまで叩き続ける。
ひたすら叩き続けるとさすがの骨も肉状になり、ねばりがでてくる。これをだんご状にまるめるのである。
叩き台は大きく重いし、破片が飛び散るのでこの作業は庭で行われた。
一口大に切った鶏肉、骨の団子、ゴボウのさきがきを入れて煮る。
味噌で味をつけご飯をいれて出来上がりだが、とりぞせは普通の雑炊のようにご飯を煮ない。ご飯粒がふやけないうちにサラサラッと食べるのが美味しいので、ご飯を入れたら直ぐによそるのがこつである。
骨の団子はさっぱりした味わいで臭みはまったくなく、時々コリッとくる歯応えがたまらない、カルシュウムたっぷりの料理である。
[とりぞせのレシピ]
■材料(6人分)
地鶏 600g
ゴボウ 2本
みそ 200〜250g
ご飯 約3合分
水 8l
鶏を絞めるのでなければ、下準備は簡単。ご飯はかために炊いておく。ご飯は冷やご飯でもOK。
1. 血抜きをした鶏肉は肉と骨に分け、肉はすべて一口大に切る。骨は金づちで荒だたきをした後、たたき台の上でなたで細かく砕く。
2. ねばりが出てきたら手のひらにしょうゆをつけてだんごに丸める。ユズの皮やスダチの汁などを混ぜると風味がよい。
3. ゴボウはささがきにして水にさらす。
4. 鍋に湯を沸かし、鶏肉とだんごを入れ、一煮立ちしたらゴボウを加えて煮る。
5. 鶏肉とゴボウに火が通ったら、みそを溶き入れる。
6. ご飯を入れて一煮立ちしたらできあがり。

参考文献
市民グラフいちはら「Istyle」 Vol99 (2000,4月)