干支(えと=十干十二支:じゅっかんじゅうにし)             H15.10.26

年の瀬の度に「来年の干支」にちなんだ年賀状の図柄に思い悩んだり、自分の生まれ年の干支を知らない人がない程、日本人が馴染んできた「干支」。
単に『子・丑・寅・・・・・酉・戌・亥』と言うだけでなく、深い意味があります。
ちょっと話は難しくなりますが、お付き合いください。

陰陽師・安部晴明(おんようし・あべのせいめい)。最近、映画などで話題になりました。
安部晴明が駆使したのが陰陽道、すなわち『陰陽五行思想』といわれるものです。
これが『干支=十干十二支』と深く関わっています。
陰陽五行思想とは中国の古代哲学を支配した、宇宙生成の論理から人間の道徳原理をも含む自然哲学であり、古代ギリシャの自然哲学に匹敵するものである。
・・・と物の本には書いてありますが、当館では消化できません。誤謬を怖れず当館流に解釈しました。

陰陽五行思想:
森羅万象、宇宙のありとあらゆるものは「陰」と「陽」の働きによって消長盛衰する。また、天地間のすべてのものは「木・火・土・金・水」の五つの気(五行)で成り立っており、自然界・人間社会の社会現象すべてがこの要素の消長盛衰に影響される。
陰陽は一年を周期として代わる代わるに消長盛衰した結果で生じ、この消長する間に五行も陰陽と同じように一年を周期として消長盛衰し、そのために一年間に春夏秋冬の四季が生じる。
五行は宇宙の森羅万象(惑星、季節、色彩、五感、方位、・・・・)を象徴している。
ニ行(陰陽)五行惑星季節色彩五感方位守獣
は夏至に於いて繁盛の極に達し
その後減衰し冬至に至って皆無となる。
は冬至に於いて繁盛の極に達し
その後減衰し夏至に至って皆無となる。
陰陽とも皆無となったその瞬間に
再生がはじまる。
木星青龍
火星朱雀
土星土用中央黄龍
金星西白虎
水星皮膚玄武
 *土用:季節の変わり目の最後の18日間。
夏の土用はうなぎで名高いが、四季のごとに土用はある。


十干
十干とは「甲(こう)・乙(おつ)・丙(へい)・丁(てい)・戊(ぼ)・己(き)・庚(こう)・辛(しん)・壬(じん)・葵(き)」の総称である。
もともと十干は,日の順序を示すための符号であったようだ。
中国の殷の時代(紀元前14〜15世紀)に十日を一旬として占う卜順(ぼくじゅん)が行われており、この十日ごとに循環する日を表示する数詞として用いられたのが起源と云われる。
これが後に陰陽五行説、十二支と結びついて複雑な読みと意味を持つようになった。
十干に陰陽と五行とを配置。
十干読み二行五行読み
こう木の兄(きのえ) 
おつ木の弟(きのと) 
へい火の兄(ひのえ) 
てい火の弟(ひのと) 
土の兄(つちのえ) 
土の弟(つちのと) 
こう金の兄(かねのえ) 
しん金の弟(かねのと) 
じん水の兄(みずのえ) 
水の弟(みずのと) 
陽を兄(え)、陰を弟(と)する。
陽の兄の性格は剛強・動であり、陰の弟の性格は柔和・静であるとされる。


十二支
十二支とは「子(し)・丑(ちゅう)・寅(いん)・卯(ぼう)・辰(しん)・巳(し)・午(ご)・未(び)・申(しん)・酉(ゆう)・戌(じゅつ)・亥(がい)」の総称である。
十二支はもともと十二ヶ月の順序を表示する符合であり、中国の殷の時代には使われていたという。
その後、子・丑・・では覚え難いのでそれぞれに動物を割り当てて呼ぶようになった。これを十二支獣(じゅうにしじゅう)という。
「子(ね)・丑(うし)・寅(とら)・卯(う)・辰(たつ)・巳(み)・午(うま)・未(ひつじ)・申(さる)・酉(とり)・戌(いぬ)・亥(い)」の読みはこの十二支獣を起因としている。
十二支は月のほか時刻、方位を配置されている。
十二支読 み 獣  月  時 刻 方 位
 11月  0時
ちゅううし 12月  2時北北東
いんとら  1月  4時東北東
ぼう  2月  6時
しんたつ  3月  8時東南東
  4月 10時南南東
うま  5月 12時
ひつじ  6月 14時南南西
しんさる  7月 16時西南西
ゆうとり  8月 18時西
じゅついぬ  9月 20時西北西
がい 10月 22時北北西


干支(十干十二支)
十干と十二支をを組合せ、その最小公倍数の60の周期で日、年を数えるのに用いられた。
これを「干支」「十干十二支」「六十干支」「えと」「甲子(かっし)」と呼ばれるものである。
日本の歴史には六十年以上用いられてきた元号は昭和以外にないので、たとえば、天平乙酉といえば天平十七年(745年)のことである。
また、戦乱などをその年の干支で名付けるられている。その例としては「壬申の乱(672)」「戊辰戦争(1868)」などがある。
ちなみに昭和元年は「丙寅」であり、昭和61年・62年・63年はそれぞれ「丙寅」「丁卯」「戊辰」と昭和の元号のなかで二度目の干支を迎えた。
 
十干五行十二支六十干支読み備考
1木の兄甲子きのえねかっし 
2木の弟乙丑きのとうしいっちゅう 
3火の兄丙寅ひのえとらへいいん 
4火の弟丁卯ひのとうていぼう 
5土の兄戊辰つちのえたつぼしん 
6土の弟己巳つちのとみきし 
7金の兄庚午かのえうまこうご 
8金の弟辛未かのとひつじしんび 
9壬甲水の兄壬申みずのえさるじんしん壬申の乱(672)
10水の弟癸酉みずのととりきゆう 
11木の兄甲戌きのえいぬこうじゅつ 
12木の弟乙亥きのといいつがい 
13火の兄丙子ひのえねへいし 
14火の弟丁丑ひのとうしていちゅう 
15土の兄戊寅つちのえとらぼいん 
16土の弟己卯かっしつちのとう 
17金の兄庚辰かのえたつこうしん 
18金の弟辛巳かのとみしんし 
19水の兄壬午みずのえうまじんご 
20水の弟癸未みずのとひつじきび 
21木の兄甲申きのえさるこうしん 
22木の弟乙酉きのととりいつゆう 
23火の兄丙戌ひのえいぬへいじゅつ 
24火の弟丁亥ひのといていがい 
25土の兄戊子つちのえねぼし 
26土の弟己丑つちのとうしきちゅう 
27金の兄庚寅かのえとらこういん 
28金の弟辛卯かのとうしんぼう 
29水の兄壬辰みずのえたつじんしん 
30水の弟癸巳みずのとみきし 
31木の兄甲午きのえうまこうご 
32木の弟乙未きのとひつじいつび 
33火の兄丙申 ひのえさるへいしん 
34火の弟丁酉ひのととりていゆう 
35土の兄戊戌つちのえいぬぼじゅつ 
36土の弟己亥つちのといきがい 
37金の兄庚子かのえねこうし 
38金の弟辛丑かのとうししんちゅう 
39水の兄壬寅みずのえとらじんいん 
40水の弟癸卯みずのとうきぼう 
41木の兄甲辰きのえたつこうしん 
42木の弟乙巳きのとみいつし 
43火の兄丙午ひのえうまへいご 
44火の弟丁未ひのとひつじていび 
45土の兄戊申つちのえさるぼしん戊辰戦争(1868)
46土の弟己酉つちのととりきゆう 
47金の兄庚戌かのえいぬこうじゅつ 
48金の弟辛亥かのといじんがい 
49水の兄壬子みずのえねじんし 
50水の弟癸丑みずのとうしきちゅう 
51木の兄甲寅きのえとらこういん光圀『甲寅紀行』(1674)
52木の弟乙卯きのとういつぼう 
53火の兄丙辰ひのえたつきへいしん 
54火の弟丁巳ひのとみていし 
55土の兄戊午つちのえうまぼご 
56土の弟己未つちのときび 
57金の兄庚申かのえさるこうしん庚申塔
58金の弟辛酉かのととりしんゆう 
59水の兄壬戌みずのえいぬじんじゅつ 
60水の弟癸亥みずのといきがい 



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参考文献
 「こよみ読み解き事典」岡田芳朗 阿久根末忠編 (柏書房株式会社)