
虫生地区の広済寺(むしょうこうさいじ)境内の特設舞台において、毎年八月十六日に、施餓鬼会の後に上演されます。
鬼来迎は、「鬼舞い」とも呼ばれ、地獄の責め苦から亡者を救う仏の慈悲を示す仏教劇です。浄土教の菩薩来迎を現す迎講(むかえこう、練供養:ねりくよう)の1つで、中世以降各地に伝播した芸能といえます。
江戸時代後期に記された縁起では、鎌倉時代初期に舞われたのが最初と伝えています。
鬼来迎の概要は、「大序(だいじょ)」「饗の河原(さいかわら)」「釜入れ」「死出の山(しでのやま)」の地獄の責め苦を中心に語る四段と、「和尚道行(おしょうみちゆき)」「墓参」「和尚物語」の広済寺縁起を内容とした三段に別れます。今日では、前者の四段が上演されます。「大序」では、閻魔大王が亡者を審判し地獄に押し込め、「賢の河原」では、子供の亡者を地蔵菩薩が救済する場面を演じます。「釜入れ」では、大釜で亡者をゆでる責め苦を、「死出の山」では、亡者を観音菩薩が救うまでを描きます。

「房総の祭りと技」 千葉県文化財保護協会発行 平成六年四月二十八日